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出産日記4 御簾越しの隣人 [非日常]

入院初日と二日目は個室の病室に入りましたが
3日目からは二人部屋に移りました。

病院としては、
出産の場合は個室がおすすめ、
ということだったのですが
個室と二人部屋では、
部屋代が一日1万円近くちがう!のです。

ちょうど連休中だったため
相部屋のお相手は帰省中ということで、
二人部屋をひとりで使わせてもらいました。

隣の人が戻ってきたのは
二人部屋に移って3日目の夜、
夕食が終わったあとでした。

各自のベッドの周りには
カーテンを閉めているので
お互いの姿は見えず、
物音や、訪ねてくる看護師さんとの会話しか聞こえません。
その人は出産のための入院ではないようす。
こちらには赤ちゃんがいるので
泣き声とか、迷惑かなと思いつつ
声をかけそびれたまま消灯時間になりました。

その夜に限って授乳してもおむつを替えても
ユイがぐずぐず泣きやまず
隣に人がいるから病室内でようすを見るわけにもいかず
新生児用ベッドに乗せてすみやかに授乳室へ。
で、泣きやんで戻ってくると
またすぐ泣きだして、また授乳室へ・・・
というのを何度か繰り返しました。

あああ、うるさいだろうなぁ。
やっぱり隣に人がいると
申し訳なくて消耗するなぁ・・・。
ついに夜中、ユイは新生児室で預かってもらって
わたしは朝まで休むことに。

次の日の朝、わたしと隣の人のところに
体温や血圧をチェックするため
それぞれ看護師さんが訪ねてきたあと
隣の人から名前を呼ばれ、
「昨日、夜遅く戻ってきたから、
もう寝ているかもしれないと思って、
あいさつできなかったんですが・・・」
と、声をかけられました。

「こちらこそ!
昨日の夜中騒々しくてすみませんでした。
赤ちゃんがいるもので・・・」
あいさつはこちらからすべきだったのに。
わたしは恐縮しました。

「いえいえ、わたし、そういうの気にならないので大丈夫です。
赤ちゃん、おめでとうございます」

おお、なんていい人なのだ。
そのあたりでまた授乳に呼ばれ
わたしは一日中授乳室と病室の往復を繰り返しました。

隣の人は戻ってきた翌日の夕方に退院してしまったので
わたしはまたひとりになり、
そのまま退院まで隣にはだれも入らなかったため、
二人部屋だったのは一晩だけでした。
これはかなり助かりました。
いくら隣の人がいい人とはいえ
やっぱりあの夜がずっと続いたら
疲労は数倍になっていたことでしょうな。

けっきょく、カーテン越しにしか会話もせず
お互いの顔を見ることもなく
わたしが授乳室に行っている間に
隣の人は退院してしまったのでした。

直接顔を見ないで話をし、
そして去っていくとは
御簾越しにしか人と会わない
昔の高貴な人のようですね。

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